もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
 今日の約束はノーマルポジション、学園前駅の階段そばだから。
 首筋をつかまれたまま乗車列ができているホームを2列分奥に進んで。
 前に立つおじさんの背中をビミョーにバッグで押しながら電車に乗りこんだ。
 毎度ドア口で立ち止まるだれかにちょっとばかりむかつきながら、奥へ、奥へと進んで。
 ()り革につかまって、ツンとあごをそらしている涼子(りょうこ)の横に立つ。

「おはよー」
「…………」
 返事をしてくれない涼子は、目をすがめてあたしのうしろをにらんだ。
「よう……」
 耳の横で慎吾(しんご)の横柄な声がする。
 あたしはサンドウィッチのハム状態だ。
 つり革をあたしに譲った涼子が、あたしの腕にしがみついてきた。
 目線はあたしを通り越して斜めうしろに向いている。
(はぁぁぁぁ)
 公衆の面前で、またみっともない騒ぎになることを、ほとんど100%覚悟していたあたしとしては、この沈黙はありがたいけれど意外で。
(なんだか、わからないけど――…)
 それならもう、へたなことはしゃべらないにかぎるので沈黙を選択。
(でも、いったい、どした?)
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