惚れたら最後。
……なんか、人多くない?
3日後、絆に連れられ本家に足を運んだ私は驚いた。
普段はしんとして人気のない本家がやけに賑やかだったから。
宴会前の準備もあるのかな?
広い庭に入った時点から組員にチラチラと好奇の目を向けられ正直落ち着かない。
時折「あれが噂の?」など「絆を射止めるなんて大した女だ」等組員に噂話をされ、ちょっと気分が悪かった。
なんとか人目をかいくぐって玄関にたどり着くと、ひとりの男が立っていた。
「ほう、どえらい美人だな」
「は?」
「あ、ごめん絆。声に出ちゃった」
私を見てやわらかく笑う、大人の色気を醸し出しているこの男。
「初めましてコハクさん。私は組長代理の荒瀬颯馬と申します。
あなたを組長のもとへご案内します」
組長代理……!?こんな大物に出迎えられるとは思わず、私は目を丸くした。
「あ、ちょっと!俺が案内する予定だったのに!」
そこに走ってきたのは若頭補佐の憂雅。
彼は走りながらスーツのジャケットを着ると、私の前で止まった。
「可愛い甥っ子にカノジョができたなんて聞いたら飛んでくるに決まってるじゃん。
お前はおチビたちの世話しときなよ」
「何言ってるんですか。絆の、若頭の片腕は俺です!」
私を挟んで繰り広げられる色男たちの言い争い。
イケメンに囲まれるとプレッシャーがすごい。
困り果てて絆に目で訴えた。
「叔父貴……琥珀が引いてるから勘弁してやってくれ」
「あらら、ごめんなさいね」
ウインクしながら軽く謝る極道を目の当たりにして、驚きの連続だった。
ヤクザとは思えぬほどアットホームだな。
でも、彼らが私の真実を知ってしまえば、もうこんな風に出迎えてくれることはないだろうと考えると悲しかった。