惚れたら最後。
態度を変えてそう言うと、和やかな空気が一気に張り詰める。

荒瀬壱華は困惑した表情を浮かべ、絆は突然の発言に目を見開き、組長は片方の眉を上げて私を睨んだ。



「どういうことだ、言ってみろ」



低くうなるような絶対的支配者の“狼”の声に覚悟し、全てをさらけ出すことにした。

私は固く閉ざしていた秘密を紐解くための一声を上げた。





「『あの女さえいなければ、“壱華”さえいなければ』。
これが私の母親の口癖でした」




淡々と感情の起伏なく語る様子を、その場にいる3人が食い入るように見つめる。

組長が一瞬はっとしたような表情を見せたものの、口を挟もうとはしなかった。

そして私はついに暴露した。








「“相川美花(あいかわみか)”。
それが私の生みの親の名前です」







< 110 / 312 >

この作品をシェア

pagetop