惚れたら最後。
秘密が暴かれ、絆は言葉も出ないほど驚いている様子だった。

彼は見たことのない苦しそうな表情を浮かべていた。

混乱で不安そうな心境に、いたたまれなくなって唇を結んだ。

一方で、眉間に深くシワを刻んだ荒瀬志勇が口を開いた。



「……馬鹿を言え。梟は何十年も前からこの街で情報屋をしている。
あの抗争が起こった時、お前は生まれてもいないはずだ」

「梟は私で数えて三代目です。『平成最大の抗争』に関わったのは先代の梟でした」



今から約20年前、未だにニュースに取り上げられるような、歴史に刻まれる大抗争が起こった。

その時、無償で情報をかき集め、荒瀬組の手助けをしたのが先代の梟・夢だ。

以来、荒瀬志勇は梟の情報屋としての実力を買っていた。



「なら、そいつは今どこにいる?」

「2年前に亡くなりました」

「……そうか。では初代は?」

「それはトップシークレットです」

「あ?」



淡々とした口調が気に入らなかったのか、帝王は下から()めつけた。

その恐ろしい表情に、湧き上がる恐怖に打ち勝つため大きく息を吸い込んだ。
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