惚れたら最後。
私の心にわだかまる秘密が、ついに(ほど)かれようとしていた。



「“平成最大の抗争”のことは知ってるよね?
ひとりの女を───相川壱華を巡って起きた前代未聞の極道の大抗争。
その引き金になったのが壱華の義理の姉、美花だった」



だから許されなくて当たり前なのに、それでも絆の両親が自分の存在を許してくれて衝撃を受けた。

どんな親だろうと子どもは関係ないと言ってくれた壱華さんの顔が浮かぶ。



「美花はその事件後、荒瀬組の圧力もあって二度と普通に生きることができなくなり、風俗嬢として生きていた。
でもあの女、顔だけはいいから売上はよかったみたい」



だけど、あの最低な女の血が私に流れていることは確かだ。



「それを狙って琥珀色の瞳をした外国人の男が『いっしょに逃げよう』ってそそのかしてきたんだって。
味方も誰もいないその状況では、そんな胡散臭い男もあの女にとっては救世主だった。
結果騙されて金を巻き上げられ、私を産んだけど」



淡々と話すものの、当時を思い出し顔をしかめた。



「美花が騙されたって気がついた時から、私に対する暴力が始まった。
ストレスのはけ口にされてひどい暴力を受けた。
目が気に入らないってまぶたに根性焼きされたのが一番痛かったなぁ。
幸い、ケロイドにならずに少し火傷の跡が残ったくらいだからよかったけど」




1番痛かったのがその出来事であって、叩く蹴るなどの暴行は日常茶飯事だった。

物心ついて間もない時から鮮明に覚えている。

そうだ、死にたくないと思う琥珀を見て、あの女は生に執着する卑しい瞳だと言ったんだ。



「4歳の時、雪の日に数時間ベランダに出されて気を失った。
それで死んだと思った美花に近くの橋の高架下に捨てられた。
そこに通りかかったのが夢だった」



そんな地獄の日々は、情報屋として活動していたひとりの女によって救われた。
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