惚れたら最後。
高架下にはホームレスがダンボールで作った家に住んでいて、夢はたまにそいつから情報を買っていたらしい。



『……子ども!?まだ生きてる!大丈夫かいあんた!』



当時24歳だった夢は高架下に捨てられた幼子を見て血相を変え迷わず抱き上げた。

そこから記憶は覚えてないけど、気がついたら病室のベッドに寝かされていた。



『気がついたかい、よかった』

『っ……!』



伸ばされた腕に過剰に反応し顔を隠すと、彼女がはとても悲しそうな顔をして、頭を優しくなでた。



『……よしよし、辛かったねえ。
こんなちびっ子がよく頑張ったよ、今日から私があんたを守るからね。うんと甘えていいよ』



夢は言葉は少し乱暴だけど、優しくて頼りがいのある女性だった。

彼女が情報屋だと知ったのは出会ってしばらくしてのこと。

まともに教育を受けず、ひらがなすら読めなかった私に言葉を教えた時のことだった。

夢は私の学習能力、記憶力に驚き、情報屋としてやって行けると思ったらしい。

以来人を(あざむ)く方法、ハッキング技術、情報屋として生きるノウハウを叩き込んだ。

学ぶことに飢えていた私は全て吸収して、わずか9歳でハッキングして個人情報を盗むなどの簡単な仕事を任せられるようになった。

決して普通ではない暮らし。



『琥珀〜!よくやったよ、偉いね』



だけど夢はうざったいほどスキンシップをしてたくさん褒めてくれる人だった。

無償の愛をもらっていつしか本当の家族のようになった。

夢とはいっぱい笑いあっていっぱい喧嘩した。



『赤ん坊を拾っただぁ!?犬じゃないんだから、何考えてんだいあんた!』



13歳の時、流星と星奈を拾ってきた日にはすごく怒られたけど、結局率先して子育てをしてくれた。

彼女と歩んできた道は大変だったけど幸福だった。

だけど幸せな日は長く続かない。
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