惚れたら最後。
「やだ、この子可愛い!
壱華が褒め称える気持ちがよく分かる!」



すると襖ががらりと開いて、黒地の豪華な振袖の壱華さんが笑顔で顔をのぞかせた。



「うふふ、でしょう?」

「あー!涼さんずるい、私も琥珀とハグしたい」



荒瀬の女性陣は今日もかわいい。

おかげで正月から気分がいい。

その後、ヘアメイクを終えた私たちは男性陣が待つ狼の間に足を運んだ。






「はーい、お待たせしました〜!」



涼さんが陽気に襖を明けると、スーツを着た3人の男性陣が食い入るように見つめてきた。

絆は私を見つけると目を丸くして、ピシッと人形のように固まってしまった。

え……何その反応。やっぱり似合ってないのかな。


すると組長の荒瀬志勇が立ち上がってこちらにゆっくり歩いてきた。

私は目を疑った。



「やっぱり黒が似合うよなぁ、さすが俺の嫁」



なぜなら、彼が満面の笑みを浮かべていたからだ。



「正月早々セクハラはやめてね?」



対する壱華さんはドライな反応を見せるが、それが逆に萌えるのか所構わず抱きしめた。

仲睦まじい様子になんだかほっこりした。


「……」


ところがその時、悲しい目で両親を見つめている永遠に気がついた。

いつもニコニコと笑っている彼女だが、その時ばかりは視線を下に向けて元気がない。

何か嫌なことを思い出してしまったのだろうか。



「壱華さんの振袖、永遠が着付けしたんでしょ?すごいね」

「……ありがとう」



笑顔で伝えると永遠はちょっとびっくりしたような顔を見せ、そして頬をほんのり赤く染めた。

ふわりと笑う永遠。

何を悩んでいるのかは知らないが、できればこの子には笑顔でいて欲しい。

そう願って優しく微笑んだ。
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