惚れたら最後。
準備が整いそろそろ出ようかという時に、流星と星奈が部屋に入ってきた。

星奈は憂雅さんと手を繋ぎ、目をこすりながら部屋に入ってきたが、私の姿を見るとカッと目を見開いた。



「わぁぁ!琥珀お姉ちゃんキレイ、お姫様みたい!
ねえ流星起きてよ!」

「うぅ〜ん……」



流星は憂雅にだっこされてうつらうつらしている。



「あっ!ちょっとなに寝ようとしてるの!
起きてよ!……あ、そうだ。憂雅ちょっとしゃがんで」

「ん?いいよ」



憂雅さんが言われたとおりしゃがむと、星奈が流星の耳元で大きな声を発した。



「流星の好きなせいそけいのお姉ちゃんがいるよ!」

「え!どこに!?」



が、「清楚系のお姉ちゃん」と言葉を聞いた瞬間飛び起きて憂雅の腕から抜けた。

流星……あんたって子は……!

思わず片手で顔を覆うと、流星は周りに大人がたくさんいることに驚いていた。



「あけましておめでとうございます!」



そして突然スイッチが入ったようにビシッと姿勢を正した。



「ブッ……」

「ふっ……くくっ」

「ふっ、ふふふっ」



突拍子もない行動に吹き出したのは荒瀬颯馬。

笑いを堪えているのは刹那と永遠だ。



「憂雅を彷彿とさせるガキだな……」

「うふふ、元気いっぱいね」



組長は呆れたような目線で憂雅を見て、壱華は朗らかに笑ってみせた。



「じゃ、じゃあな琥珀。ちびっ子たちは俺が見ておくから。
ほら流星、星奈行くぞ」



バツが悪そうな表情の憂雅は退室しようと小さな手を引く。



「え!?琥珀がすごいキレイなかっこうしてる!
待って憂雅、スマホで琥珀の写真撮るの!」

「時間ないからまた後でな」

「え〜?」

「ほら〜、だから言ったでしょ後悔するって!」



正月から相変わらずの2人の後ろ姿を微笑ましく見ていると、壱華さんと目が合った。



「……すみません、お騒がせして」

「どうして謝るの?かわいい子たちじゃない。
ちゃんと新年の挨拶できるくらい礼儀正しいし。
なかなかうちの旦那様を前にして堂々とできないから、あの子たちすごいよ?」

「ふん……」




鼻を鳴らす組長は愛しい妻に触れているからなのか、少し表情が柔らかい。

それから数分後、車の準備ができたと連絡を受け、初詣に向かうことになった。
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