惚れたら最後。
食事を済ませた後、長居もなんだからとすぐ自宅に帰ることにした。

まだ引越しは終わっていないしできれば面倒なことを先に終わらせたい。



「ねえ、琥珀。今度一緒にここに行きたいの」



絆の両親に挨拶を済ませた帰り際、永遠に話しかけられた。



「どこ?……へぇ、ホテルのランチ限定ビュッフェ……。
目玉は三つ星シェフ監修のスイーツ!?
行きたい!流星と星奈もこういうの好きだと思う」

「うんうん、みんなで行こうよ。来週空いてる?」

「うん、いつでも大丈夫だから連絡して!」



スイーツ好きが高じて話が盛り上がっていると服の袖を引っ張られた。

振り返ると絆が少し寂しげな表情でこっちを見ていた。



「……俺は?」

「絆、甘いの苦手でしょ?」

「琥珀が一緒なら苦じゃない」

「そこまでしてついて来なくていいのに」

「……」



絆は黙り込んでムスッと唇を尖らせる。

え、そんな顔するほど心無いこと言った?



「ふふっ、お兄ちゃんはお父さんと一緒で、琥珀をどんな時も独占したいんだよね?
琥珀のこと誰よりも好きだから」



すると永遠が軽やかに笑った。

妹の柔らかい笑みを受けて和やかな雰囲気に変わった絆は少しいたずらっぽく笑った。



「当たり前だろ、じゃないとわざわざ親父に頼み込んで初詣に連れて行かせるかよ。
琥珀は俺のだ。一生離してやらねえ」
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