惚れたら最後。
「わぁ、お兄ちゃん悪い顔してる」



目の前でド直球を投げてきたため、ギョッとした顔で彼の端正な顔を見つめた。

その様子を眺める永遠はなんだか嬉しそうだ。



「まあ、そういうわけで俺は琥珀を手放すつもりはないって親父に言っといてくれ。
今から琥珀を家に送ってくる」

「はーい。じゃあまたね琥珀、来週楽しみにしてる」

「私も楽しみにしてる。予定決まったら教えて」



絆の赤面レベルの発言に動揺しないように笑顔を貼り付け、玄関から出るとそっとため息をついた。

絆は「疲れたか?」と声をかけてきたが大丈夫と言って彼と肩を並べた。

それから本家に戻って弟たちと合流した後、憂雅さんの車で自宅に送ってもらうことになった。



「嬉しそうだな、琥珀」



にやけながら永遠とスマホでやり取りをしていると絆に見つめられていることに気がついた。



「だって『狼姫』とこんなに仲良くなれるなんて思ってなかったから」

「さっきから永遠のことばっかりだな琥珀」

「……あ、ごめん」



しまった。

今日招待してくれたのも、振袖を用意してくれたのも絆なのに、永遠のことばかりでは嫌気がさすのも当然だ。

今の発言を取り消したいと考えていたら、後部座席の流星が身を乗り出してきた。



「そんなことないよ絆兄ちゃん!
琥珀ね、家ではいっつも絆兄ちゃんのこと……!」



嫌な予感がしたので慌てて流星の口を塞いだ。

しかし。



「絆お兄ちゃんが好きすぎてしんどいって言ってるよ」

「星奈!」



憂雅さんのスマホを使って動画を見ていた星奈に暴露されてしまった。



「『尊い、無理』もよく聞くよ!」

「あとね、よく絆お兄ちゃんの写真ながめてニヤニヤしてるよ」

「もうやめて……」



次々と明かされる恥ずかしいエピソードに顔を覆う。

すると絆はその手を強い力で引き剥がして私の顔をじっくり観察した。

たまらず頬が熱くなっていくのを感じた。
< 166 / 312 >

この作品をシェア

pagetop