惚れたら最後。
「ありがとう、大事な手紙見せてくれて」

「ははっ、夢ってば怒るかな?私に宛てた手紙なのに絆に見せちゃって。
きっと生きてたら『なんで彼氏に見せてんだい』って照れながら怒って───」



手紙を返すと暗い気持ちを隠すように笑ったが、不意に言葉が止まった。

その琥珀色の瞳から一粒、涙がこぼれ落ちたからだ。



「え?……嘘」


動揺を隠せない琥珀は流れ出す涙を指先で拭っては目頭を押さえることを繰り返す。

俺は肩に手を回し抱きしめた。



「ごめん絆、こんなつもりじゃ……」

「いくらでも泣けよ、全部受け止めて背負ってやるって言ったのは俺だからな。男に二言はない」

「嫌だ、迷惑かけたくない」

「ならねえって。今まで我慢してたんだろ?
俺とふたりっきりの時くらい素直でいろよ。
頼れる人間がいない中、たったひとりでよく頑張った。自分を讃えろ、お前はすごいよ」

「……」



黙りこくった琥珀はひしっとしがみついて声を押し殺し泣いている。

たった18歳の少女だ。もっと年相応にわがままでいてもいいのに、背負ってきた隠し事が多すぎて自分を見失っている。

やっと居場所を見つけたのに、甘えたり頼ったりしたことがないからどうしていいのか分からないんだろう。

……なら存分に甘やかすまでだ。



「どーせ流星と星奈の前じゃ泣けねえだろ?お前強がりだから。
ここで泣いてスッキリして帰ろう?」



子どもをあやすように背中をとんとんと優しく叩いた。

こくこく無言でうなずく琥珀がかわいい。

俺は体制を変えて正面から琥珀を抱きしめた。
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