惚れたら最後。
SIDE 琥珀


翌週、私は永遠との約束通り高級ホテルのレストランにいた。

その一行にはなぜか憂雅さんが一緒だった。



「うわぁ、おれ絶対あれ食べる!『たるとたん』ってやつ!」



流星は席に着く前から、鮮やかなオレンジ色のツヤツヤのケーキが気になったみたい。



「流星、『タルトタタン』な」

「タルトタタタンってなんのケーキ?」

「ぶはっ、『タ』が一個多いよ。
タルトタタンはりんごのタルト、うまいぞあれ」

「へぇ〜」



すると手を繋いでくれていた憂雅さんが笑った。

詳しいなぁ、彼はどうやら本当に甘党らしい。



「ねえ琥珀、後でアレしよう」

「お姉ちゃんわたしもしたい!」



星奈と永遠が手をつなぎながら上ずった声で話しかけてきた。

目線の先には、巨大なチョコフォンデュファウンテンが。



「は〜、チョコフォンデュは夢があるよね。
うん、一緒にしに行こうね」



約束した後、席に着いて荷物番をして後から選びに行くことにした。

すると、近くのテーブルから視線を感じた。

見ると、テーブルをひとつ挟んで向こう側に2人の男が座っていた。

彼らは見つめられていることに気がつき、ささっと視線を逸らした。

あれ、荒瀬組本家の人だよね。護衛で来たのかな。



「お待たせ〜。琥珀取りに行っといでよ」

「あ、ありがとうございま……えっ!?」



そっちに注意を向けていたものだから、皿を両手に持って帰ってきた憂雅さんに驚いた。

彼はこれでもかというほどお皿にスイーツを乗せていた。

高身長でガタイのいい男がスイーツなんて、ぶっちゃけミスマッチだ。



「……憂雅さんって、ほんとに甘いもの好きなんですね」

「ん?俺生粋の甘党だからさ、こういうのは絶対行く。意外だろ?」

「はい、ギャップがすごいです」

「ははっ、よく言われるそれ」



にっこりと、いい笑顔で笑う彼。

絆とはまた違うけど、爽やかなイケメンなんだよねぇ。

その笑顔をまじまじ見つめながら料理を取りに行くかと立ち上がった。
< 180 / 312 >

この作品をシェア

pagetop