惚れたら最後。
「あ、ごめんね流星。なんでもないよ」



テーブルに戻ってきた永遠はいつもの優しい笑みを浮かべていた。



「そうなの?そしたら永遠、おれと一緒にローストビーフ食べようよ。
いっぱいもらってきたんだあ」

「ふふっ、ありがとう流星。流星みたいな可愛い子に誘われたら断れないなぁ」

「でしょ?流星と星奈は可愛いんだから」



姉バカっぷりをかましたが、流星と一緒にいた憂雅さんが戻ってきてないと気がついて首をかしげた。



「流星、憂雅さんは?」

「プンプン怒ってレストラン出ていった女の人を追いかけていったよ。
すぐもどるって言ってたけど」

「え、なんで?」

「わかんない。はい、永遠、あーん」

「えっ、あーんしてくれるの?幸せ〜」



かわいいふたりが可愛いことをするものだから、どうでも良くなって考えるのをやめた。

それからしばらくして、憂雅さんが小走りでテーブルに帰ってきた。

彼はシビアな表情だった。



「琥珀、大丈夫だったか?」

「何がですか?」

「え?いやさっき女に絡まれたろ?」

「ああ、永遠が撃退してくれました。ありがとう永遠」



琥珀は永遠に笑いかけた。



「あれくらい大したことないよ。ちょっと睨んだら逃げちゃったし」

「はは、普段温厚な永遠が怒ったら怖いもんな」

「憂雅の方が怖いと思うけどね、笑いながら怒るでしょ?目が笑ってないの見るとゾッとする」



憂雅さんは「そんなに?」と言いながら席についてケーキをひとくち頬張った。
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