惚れたら最後。

荒瀬の『狂犬』

1月中旬、入念に準備していたため、特に問題なく引越しが完了した。



「わあぁ、この部屋おれひとりで使っていいの?すごいすごい!」

「やったぁ!これからは憂雅といっしょにいられる!あとで事務所にあそびにいこーっと」



流星はひとり部屋をもらって大興奮。

星奈は大好きな憂雅さんと距離が近くなったことで嬉しそうだ。

……もっと早くこうしてあげればよかった。

周りの目を気にすることなく暮らしているふたりは、今の方が子どもらしくて伸び伸びしている。

これまでは大人の都合で無理に我慢させちゃってたなと思うと罪悪感を覚える。



「どうした?」



私の異変に敏感な絆は、後ろから回り込むと顔を覗き込んできた。



「……疲れた、肩こっちゃって」

「引越しで忙しかったもんな。
まあ、琥珀胸がでかいからそれもあるだろうけど」

「子どもたちの前でセクハラはやめてよ」

「あ?何言ってんだ。通常運転だ」

「もう、最低……」

「ハハッ、冗談だって。疲れてんだろ?
肩揉んでやるからそこのソファー座れよ」

「いいの?ありがと」



お言葉に甘えてソファーに座って、後ろから絆にマッサージしてもらうことにした。



「んっ……あー、気持ちいい……」



親指で押したり、手のひら全体で揉んだり、なかなか絶妙な力加減に気持ちよくて声が出てしまった。



「……琥珀、俺以外の男にマッサージとかさせるなよ」

「えー?なんで?」

「反応が色っぽいからやばい」

「はぁ!?そんなことない───」




耳を疑う言葉に反論しようとしたけど、ドアがガチャっと勢いよく開いて、驚いて口を閉じた。
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