惚れたら最後。
引越しが済んで一段落したころ、家具や日用品を買い出しに行っていた。
その日は潮崎理叶が出所する当日だった。
しかし午後に本家に来るらしいので、少し時間に余裕がある絆がついてきた。
ちなみに流星と星奈は本家で面倒を見てもらっている。
ふたりは今日、潮崎が出所するので念のため学校を休んだ永遠と刹那に勉強を教えてもらうそうだ。
「憂雅さん、車出してもらってありがとうございます」
「いいってことよ。これだけの荷物、琥珀ひとりで抱えて帰ってくるの大変だろうしさ」
車を出してくれた憂雅さんにお礼を言うと、ふと知っている道を走っていることに気がついた。
「ちなみに憂雅さん、この近辺に有名な洋菓子店あるの知ってます?
タルトが有名なお店なんですけど」
「え?知らないけどすっげぇ興味ある」
「よかったら永遠と刹那にお礼で買って帰ろうかと思って」
「いいな!寄っていこうぜ。案内してくれよ」
憂雅さんが楽しそうに同意した直後、ちょうど絆のスマホが鳴り響いた。
絆は仕事用のスマホを取り出すと、途端に嫌そうな顔をした。
「何?……今から?……はぁ、叔父貴からかかってきた時点でそんな気はしてたけど、14時ごろって言ってなかったっけ?」
電話の相手は颯馬さんのようだ。
「……分かった。今からそっちに行く。30分はかかると思う」
通話を終えた絆は申し訳なさそうに口を開いた。
「憂雅。悪いけどこのまま本家に直行してくれ。
理叶さんがぼちぼち本家に出所の報告に来るらしい」
「うわっ、そんな気がした。やっぱりかぁ。
タルトおあずけだな、残念」
「琥珀も悪いな」
「私はいいけど……もしかして私もこのまま本家に行かなきゃいけない?」
「……ああ、さすがに理叶さんと鉢合わせることはないだろうから大丈夫と思うけど」
「分かった、それなら全然いいよ」
うなずいたあと、車は本家に目的地を変え走り出した。