惚れたら最後。
「で、そんなことより“あれ”はどうなった?」




そんな時、突然の親父の質問に耳を疑った。

司水さんがいる場で“その質問”が来ると思っていなかったからだ。



「梟に依頼した件か?」



その表情の意味を察した親父は、疑問を感じたように眉をひそめた。



「司水はあの娘が梟であると知っている」

「親父が言ったのか?それじゃ琥珀との約束と違うじゃねえか」

「案ずるな、暴露したのはあの娘の方からだ。
3日前くらいだったか───『鳴海司水には正体がバレるだろうから予め伝えておいた』と俺宛にメッセージが届いた。
その反応だとどうやら、聞いてねえみたいだな」



俺ははショックだった。琥珀が自分に黙って秘密を明かしたことを。

そういうことも相談してくれる仲になったと思っていたから、余計ショックを受けた。

思わず落胆して視線を下に向けたその時、司水さんが「ふふっ」と不敵に笑った。



「なるほど、相当賢い女性なんですね」

「……?」

「絆を心配させたくなかったんですよ。きっと私を警戒しての行動だと思います。
先代組長と荒瀬の狂犬、このふたりに近い私に怪しまれたら大変だと考えたのでしょう。
ならば正体をあえて明かした上で、口止めした方が早いと」



わずかな会話で俺の感じている不快感の理由を突き止めた司水さんに驚いた。

さすがは組長の側近を十数年務め上げた男だ。

相当な切れ者でなければ、務まるはずがない。
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