惚れたら最後。
ふたりの話が一旦止むと、静観していた颯馬さんが口を開いた。



「兄貴、司水さん、話脱線してない?」

「ああ、失礼しました。それで彼女は新しい情報を掴んだのでしょうか」



司水さんは穏やかな顔で謝り、俺と見合わせた。



「しっぽを掴んだと言っていた。
一度捨てた考えだったが、やはり中国系のマフィアと繋がっている詐欺グループらしい」

「証拠はあるのか?」

「あるにはある。だが向こうもやり手だ。
ここでサツに証拠を出したところで、捕まえられるのはせいぜい下っ端だろうとの見解だ」

「ならどうやって日本の裏社会から引きずり下ろす」

「それに関しては西を、『望月大希』を利用して主犯格の池谷をおびき出すと言っていた」

「絆、お前はあの男に会った事がないから簡単にそう言えるが、あの男を使うのは骨が折れるぞ。あいつにはこれと言った弱味がない」

「琥珀は考えがあると言っていた。
だからせめてあと1月待って欲しいと。せめて証拠が出揃うまで」



次々質問や意見を挟む親父はどこか余裕がなかった。

しかし自身を落ち着かせるように深く息を吐きながら腕を組むと、最終的な答えを出した。



「分かった、ひと月待とう。だがそれ以上かかるようなら時間のかけすぎだ。
その時はどんな手を使っても池谷を見つけ出し抹殺しろ」

「……はい」



親父の顔を見てうなずく。

そして俺の目を見つめると、何も言わず立ち上がって部屋の外に出ていった。

俺もその後を追うようにして部屋を出て、琥珀がいる離れを目指した。
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