惚れたら最後。
実家の玄関をくぐると笑い声が聞こえてきた。

今さっきまで置かれていた環境と打って変わって、明るい雰囲気にそれだけで心が軽くなった気がした。

リビングに入るとみんながテレビに注目していた。どうやらゲームをしているようだ。

そっちに熱中していて誰もこっちに気が付かない。

すると床に敷かれたラグの上に座っていた刹那が、カシャンとコントローラーを地面に置いた。



「だー、負けた!流星強くね?
俺6歳児に全然勝てねえんだけど」

「流星、ヒマさえあればこのゲーム攻略してるから」

「マジかよ。……ってなんだよ絆、いつからそこに居た?そんな辛気臭い顔してどうした」



ゲーム画面から目が離れたことで視界が広がったのだろう、刹那に気づかれた。

みんな一斉にバッとこっちを見る。

俺は無言でリビングを横切り、母さんと永遠に挟まれてソファに座る琥珀に話しかけた。



「遅くなってごめん。琥珀、帰ろう」

「えぇー?俺のことガン無視!?」


あえて大声で主張してきた刹那だったが、一度話しかけるとめんどくさいから無視を決め込んだ。

琥珀はそんな刹那に苦笑いしながら立ち上がる。



「えー、絆兄ちゃんもう帰るの?」

「わたし、まだお姉ちゃんたちと遊びたい」



しかし、流星と星奈がゲームのコントローラーを握ったまま寂しそうに呟いた。

琥珀は「わがまま言わないの。たくさん遊んでもらったでしょ?」と声をかけて片付けをするよう促していた。



「……流星くんと星奈ちゃん、今日ここに泊まっていく?」



その時、俺の異変に気がついた母さんが口を開いた。
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