惚れたら最後。
読み進めて最後のページにさしかかったときだ。ページの隙間から何かが滑り落ちた。

絆は持ち前の反射神経でキャッチすると、まじまじとそれを見た。



「手紙……?タクミへ?」

「え、それ……」

「あ、悪い。見ちゃいけないもんだったか?」

「ううん、大丈夫だけど……まさか、夢が拓海さんに手紙遺してるとは思ってなくて」

「……どうする、これ渡すか?」

「とりあえず拓海さんに聞いてみる。
来週その人に逢いに行くよ」



絆から手紙を受け取ったが、なぜか手紙のはしっこを掴んだまま手放してくれない。



「は?なにしてんの絆」

「いや、タクミって誰だと思って」

「……もしかして嫉妬?48歳のおじさんに?」

「お前の最愛の育ての親が好きになった男だろ?よほど魅力があるに違いない。
それに歳は関係ねえ、男はいくつになっても男だ」

「はあ、絆。最近ますます嫉妬深くなってない?」



ため息をつくと、絆はびっくりして手紙を手放した。



「どうしたの?」

「……いや、まったく持ってその通りだと思って」



そう言って立ち上がって絆はキッチンに向かった。
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