惚れたら最後。
戸棚からコーヒーメーカーを出してコーヒーを淹れようとしている絆はどこか呆然としていた。



「どうしたの、絆」

「……反省中」

「反省?何に対して?」

「今の発言は気色悪いと思って」



近づいて話しかけると顔を背けてそう言われた。

なんか落ち込んでる?子犬みたいで可愛いんだけど。

いつも屈強な男の前で堂々としているくせに、自分の前ではまるで子犬。

そのギャップに母性本能をくすぐられた。

「えいっ」と言って後ろから勢いよく抱きつくと、たくましい腕がビクッと強ばった。



「気持ち悪いなんて思うわけないじゃん」

「……琥珀」

「絆は顔がいいから何言っても大抵許されるよ」

「そっちかよ」

「あと私は絆が思ってるよりもっと、絆のこと好きだよ」



すると絆は抱きつかれたまま視線を下に落とした。



「じゃあさ、なんで俺に言わなかった?」

「何を?」

「司水さん……鳴海司水に自分が梟だと正体を明かしたこと」



それを聞いてようやく、絆の元気がない理由が分かった。

変に嫉妬深いのもそのためかと納得した。
< 220 / 312 >

この作品をシェア

pagetop