惚れたら最後。
そう伝えたら絆の心のモヤが晴れるかと思ったが、そうじゃなかった。

彼はかすかに笑うと私の頬を指で触れた。



「琥珀も俺と同じ気持ちだって?……そんな訳ねえよ」



その手を後頭部に伸ばし、ぐいっと引き寄せて抱きしめた。

驚く私をよそに、絆は耳元で思いの丈を晒した。



「俺はお前が好きでたまらない。誰の目にも触れてほしくない。
俺だけを見てほしい、俺だけの琥珀であってほしい。
そんな思いが強くなって、あまつさえ最近はお前の大事な弟たちにさえ嫉妬してしまう。
もういっそ、監禁して俺から一生逃げられないようにしてやりたい。
こんな俺の心情が……お前と同じベクトルの愛情なわけねえだろ」




一方的で乱暴な狂気的な愛情。

ゾクゾクする心境の裏腹、なぜかほっとした。

隠していた本性をやっと見せてくれたと。

嫌われたくないあまり、我慢をしていたのは分かっていた。

なにせこの男は闇の帝王の息子だ。

裏切りが日常のこの世で、一途に愛した女への執着が普通なわけがない。

一種の安堵を覚え、それから絆に向けて微笑んだ。
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