惚れたら最後。
chapter.4
黒幕
楽しい時間はあっという間で月日は飛ぶように過ぎ、私はそれ以降自室にこもって勉強するようになった。
そしてついに迎えた大学受験の日。
その日は木枯らしが吹きとても寒かった。
朝早くからひとりで受験会場に向かい、黙々と試験をこなした。
結果、手応えは十分。しっかり勉強をしたとはいえ、試験が終わってようやく安心できた。
夕方まで続いた試験だったけど、足取り軽く会場を出た。
「すみません、道を教えて欲しいんですけどいいですか?」
「はい、私ですか?」
辺りが夕闇に飲まれた帰り道、ひとりの若い男に声をかけられた。
手に地図を広げ、イントネーションの独特さからアジア系の外国人観光客だろうと思った。
男は片手で地図を持ち、片方の手をポケットに突っ込み「ここなんですけど」と近寄ってきて隣に立つと突然、目の色を変えた。
「お前、中嶋琥珀だな?」
驚いて目を疑った。
空いている方の手に───刃渡り15cmほどのサバイバルナイフが握られていたからだ。
刃先は私の身体に向けられている。
地図で隠れているから、周りの通行人は異変には気がついてくれない。
「動くな。少しでも変な真似をしたら刺す」
刃先をじりじりと身体に近づけて来る男。
私は死を意識しながら、冷静でいられた。
場所、時間、派遣される人物、すべてが“予定通り”だったからだ。
そしてついに迎えた大学受験の日。
その日は木枯らしが吹きとても寒かった。
朝早くからひとりで受験会場に向かい、黙々と試験をこなした。
結果、手応えは十分。しっかり勉強をしたとはいえ、試験が終わってようやく安心できた。
夕方まで続いた試験だったけど、足取り軽く会場を出た。
「すみません、道を教えて欲しいんですけどいいですか?」
「はい、私ですか?」
辺りが夕闇に飲まれた帰り道、ひとりの若い男に声をかけられた。
手に地図を広げ、イントネーションの独特さからアジア系の外国人観光客だろうと思った。
男は片手で地図を持ち、片方の手をポケットに突っ込み「ここなんですけど」と近寄ってきて隣に立つと突然、目の色を変えた。
「お前、中嶋琥珀だな?」
驚いて目を疑った。
空いている方の手に───刃渡り15cmほどのサバイバルナイフが握られていたからだ。
刃先は私の身体に向けられている。
地図で隠れているから、周りの通行人は異変には気がついてくれない。
「動くな。少しでも変な真似をしたら刺す」
刃先をじりじりと身体に近づけて来る男。
私は死を意識しながら、冷静でいられた。
場所、時間、派遣される人物、すべてが“予定通り”だったからだ。