惚れたら最後。





車に乗ってしばらくするとGPSの追跡を頼んだ組員から電話がかかってきた。

俺はスマホを助手席に投げ、スピーカーにして通話を開始した。



「坊、やられました!」

「なんだ」

「GPSの信号が止まりました。
でも高速道路の上で止まるなんてことはありえねえから、たぶん通信機器を窓から捨てたんだと思います!」

「チッ……」

「車種は特定できませんでした、これからどうしましょう」

「今お前はどこにいる?」

「へい、あと10分ほどで神奈川を抜けて静岡に入るところです」

「……分かった。お前は戻れ、ご苦労だった」

「は?いいんですかい!?」

「無闇に動けば相手方の思うつぼだ。俺も一旦冷静になる」


赤信号に差し掛かった時、助手席に手を伸ばして通話をやめた。

この交差点を抜けて住宅地に入ればすぐ本家にたどり着く。

しかし、こんなにも本家までの距離が長いと思ったことは無い。



「琥珀……」



耐え難い不安の波が押し寄せる。

どうしようもできず、ハンドルを強く握り歯を食いしばった。
< 228 / 312 >

この作品をシェア

pagetop