惚れたら最後。
「絆!」

「親父……憂雅に叔父貴……?なぜここに」



本家に帰ると、玄関にいたのは厳しい顔をした荒瀬組本家の重鎮たち。



「絆兄ちゃん!」

「琥珀はここにいるよ、早く追いかけてあげて!」



そして不安そうな顔をした琥珀の弟と妹だった。

差し出された流星のスマホの画面を覗き込む。

そこには、地図上の静岡県を動く赤い点。

間違いない、琥珀の現在地だ。



「お前……これ、どうして……」

「今日お姉ちゃんがはいていったくつにはね、発信機がついてるの!
はぐれても分かるようにって、私たち3人でおそろいにしたの!
くつ箱にそれがなかったから、もしかしたらと思って……」



星奈は顔を真っ赤にして発言すると、やがて目も赤くさせてポロッと涙をこぼした。



「早くお姉ちゃんを助けてあげて。
きっとこうなること、お姉ちゃん分かってたはずなの」



ぼろぼろと大粒の涙を流しながら懸命に言葉をつなぐ星奈。

するとそれを見ていた親父が一歩前に出た。



「絆、子どもたちから全て聞いた。
白黒をつけるためにすぐにでも追え、おそらく行き先は──」

「分かってる、京都だろう」



俺はすぐに親父に背を向け、流星に渡されたスマホを握りしめ玄関から出た。



「あの娘が考え無しに攫われるとは思えない。行くのは構わないがくれぐれも冷静さを欠くなよ」



背に受けた俺に、釘を刺すような親父の声、不安を隠しきれない子どもたちの泣き声。

そんな負の感情を振り払うように外へ飛び出した。
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