惚れたら最後。
SIDE 琥珀



どれほど時間が過ぎたのか。

目隠しをされ、縛られた状態で車から降ろされた。

どこからともなく波の音とカモメの声が聞こえる。どうやらここは港の周辺らしい。



「おら、こっちだ!」

「うっ……」



髪を引っ張られながらどこかの建物に連れられ、ふと止まった瞬間、後ろから突き飛ばされ地面に投げ出された。

うめき声を上げながら上体をあげると、シュル、と目隠しの布が外された。

何度も瞬きをしながら目を明るさに慣れさせ、やがて視界に飛び込んできたのは、ひとりの中年の男の顔。


「………」


私は絶句した。






その男の瞳が、自分と同じ琥珀色だったから。








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