惚れたら最後。
「おいおい、それ以上傷はつけるな、上玉だ。
売り飛ばせばかなりの金になる。
すぐに売りに出したいのに顔面はやめてくれ」
すると、慌てたように琥珀色の瞳の男が近づいてきた。
「分かってる、ただの威嚇だ。
おい女、口の利き方には気をつけろ、それから下手な真似するんじゃねえぞ。
目に余るようだったらこんなもんじゃすまねえからな」
威嚇、というには過激すぎる。
怖い、痛い……逃げ出したい。
気持ちが悪くなり、口の中いっぱいに広がった血を地面に吐き出した。
「あーあ、唇切れてる。キズものはそれだけで値が落ちるのに。
でも、これくらいならすぐ誤魔化せるか」
一方の男は、私を売り物としか見ていない。
どうやら“その道”のバイヤーらしい。
「安心しろ、とりあえずこれで楽になる」
冷静に情報を集めていたけれど、その男が持つ注射器を見て顔色を変えた。
ヤク漬けにして正気を失わさせる魂胆だ。
私はとっさに口を開いた。
「ねえ、“相川美花”を知ってる?」
「……知らないねぇ、そんな女」
返答するまでに男の瞳が揺れ、間があった。
私は絶望に似た確信を得た。
これだけ似てたらもしかしてと思ってた。
でも、信じたくない。
こいつが──私の実の父親だなんて。
売り飛ばせばかなりの金になる。
すぐに売りに出したいのに顔面はやめてくれ」
すると、慌てたように琥珀色の瞳の男が近づいてきた。
「分かってる、ただの威嚇だ。
おい女、口の利き方には気をつけろ、それから下手な真似するんじゃねえぞ。
目に余るようだったらこんなもんじゃすまねえからな」
威嚇、というには過激すぎる。
怖い、痛い……逃げ出したい。
気持ちが悪くなり、口の中いっぱいに広がった血を地面に吐き出した。
「あーあ、唇切れてる。キズものはそれだけで値が落ちるのに。
でも、これくらいならすぐ誤魔化せるか」
一方の男は、私を売り物としか見ていない。
どうやら“その道”のバイヤーらしい。
「安心しろ、とりあえずこれで楽になる」
冷静に情報を集めていたけれど、その男が持つ注射器を見て顔色を変えた。
ヤク漬けにして正気を失わさせる魂胆だ。
私はとっさに口を開いた。
「ねえ、“相川美花”を知ってる?」
「……知らないねぇ、そんな女」
返答するまでに男の瞳が揺れ、間があった。
私は絶望に似た確信を得た。
これだけ似てたらもしかしてと思ってた。
でも、信じたくない。
こいつが──私の実の父親だなんて。