惚れたら最後。
ひと呼吸おいて赤星は口を開いた

その口元はどこか笑っているように見えた。



「もちろん私も人間ですので人並みの感情はあります。
しかし、なぜかあの人のことを憎めないのです。不可思議なものですね」

「……赤星さん、あなたは今幸せですか?」



到底理解できない主従関係に思わず質問せずにはいられなかった。



「幸せの形は自分で決めるものです。私は今の人生に満足してますよ。
……さて、そろそろ西雲の本家に到着します」



幸せの形は自分で決めるもの───その言葉がとても印象に残った。

次第に車は西雲会の本家に着いた。そこは10階建ての、一見どこにでもありそうなビルだった。

ビルの地下にある立体駐車場に車を停めると、赤星が首をかしげた。



「おや、あのセダン、ナンバーが東京ですね」

「えっ!?」



そこにあったのは確かに荒瀬組の車。

そのナンバーは憂雅の車だった。

荒瀬組がらここまで来ているなんて──無意識に鼓動が高鳴る。

その時だった。
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