惚れたら最後。
「琥珀ちゃん怪我させてしまってごめんなあ、なかなか池谷が自白せんから」

「そんなのとっ捕まえた後に吐かせりゃいいだろうが」

「あは、女が絡むと沸点低くなるの、あんたのお父ちゃんそっくりやな」

「っ……」



ぽんぽんと話題を変える望月のペースに絆は完全に飲まれてしまっている。

そんな時近づいてきたのは遠くで見守っていたはずの憂雅だった。



「絆、真面目に会話すればするほど相手の思うつぼだ。
こういうタイプ見覚えあるから対応できるはずだろ?」

「分かってるが刹那と同じやり口で腹が立つ。で、あんたは何が目的だ」



ペースに飲まれたと思っていたけど、絆はただ単に望月と刹那を重ねてイライラしていただけらしい。

なんだ、よかったと拍子抜けした。

そしてそれをいち早く察した、まさに阿吽(あうん)の呼吸の憂雅を見て、自分はまだまだだなと感じた。



「もうちょっとノってくれてもええやん。
親子そろってつれんなぁ、結局壱華も結婚式には呼んでくれへんかったし」

「何が目的だ」

「はいはい、察しがいいお坊ちゃんで。
20年前の誓約のアップデートをお願いしたい」

「……?」

「こう言ったら伝わるか?“代償の交代”をしたいんや」



発言の意味を理解した絆は眉をひそめた。

その様子を見た望月はニタリと笑った。
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