惚れたら最後。
「交換条件の対象を壱華から琥珀ちゃんへのチェンジ。そんな難しい事じゃない。
俺たちが頭抱えてた半グレ集団を一網打尽にしたんや、それくらいええやろ?」

「それが目的で琥珀をエサにしたのか」

「人聞き悪いなぁ、提案してきたのは梟やで?」

「は……?」



絆は愕然(がくぜん)として望月の顔を見つめ、一方私の腕を強く握った。

そう、これは全て私の計画だった。

望月が半グレに近づいたことも、私を攫うよう仕向けたことも、全て情報屋である私が指示したことだった。

ただ、絆が西雲会の本部まで来ることは予想外だった。



「恨むならあの情報屋を恨むんやな。俺はそれに乗っただけ」

「……梟は誓約書にそちら側が一切の交渉をしないように書かせたと言っていたが?」

「あれは新たな交渉を、やろ?今ある誓約のアップデートくらいええやん」



絆は怒っていた。表情には出ていないけど、私の腕が折れるんじゃないかと思うほど強く握ってきた。

痛くて、小さくうめき声を上げて顔をゆがめた。

絆は無意識だったのか、ハッとして力を抜き私の顔を見つめる。



「……それは俺の一存では決めかねない」

「えらい慎重やな、そんだけ琥珀ちゃんのこと本気なん?」

「当たり前だろうが。じゃないと危険を顧みず大阪まで来るか」

「アッハッハ!包み隠さんところ気に入ったわ」



望月は豪快に大口を開けて笑い、絆の肩にポンと手を置いた。
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