惚れたら最後。
「ええ目をしてはる。それに話してみて分かったが、あんたには荒瀬を背負う器がある」

「……」

「楽しみやなぁ、お互いの行く末が」



その瞳の奥に燃ゆる野心に勘づいた絆が口を開いた。



「なぜ琥珀を生かした?20年前の抗争を知るあんたなら、琥珀を殺せば自分たちが有利になることくらいお見通しだろ」

「野暮なこと聞かんといて、俺は荒瀬組が好きやねん」



すると望月は絆の肩から手を外しあっけらかんと笑った。



「は?」

「家族のように団結し、一人の女のために躍起(やっき)になる、極道らしからぬその“異常”、俺にとっちゃおもしろくてしかたない。
それに荒瀬組相手に抗争なんて結果は火を見るより明らかやん」



その笑顔は今まで見た中で一番清々しいものだった。



「最大にして最後の『任侠団体』荒瀬組。その行く末を見届けたいんや」



嘘を言っているわけでさなさそうだ、と感じるほどのいい笑顔に絆は若干引き気味だった。

刹那といる時と同じ顔だったから、こういうタイプの人間嫌なんだと思うとちょっと笑えた。



「あんたの提案については条件を飲もう。ただし、数年待って欲しい」



絆は表情を改めると望月の目を見て真っ直ぐ言い放った。



「……言ったな?男に二言はないから、その言葉に嘘つくんやないで?」

「分かってる。約束は果たそう」
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