惚れたら最後。
「口約束でも破ったら何らかの報復がある事を忘れんことやな」

「あんた、同業者に脅しが通用すると思うなよ」



絆が余裕の表情で笑うと、望月はもともと大きい目をさらに開いて驚いた顔をした。



「え、笑ったらますます壱華そっくりやん。
いけ好かん態度はあの帝王を彷彿させるけど。遺伝子って怖い」



ニヤニヤする望月だったが、ふとした瞬間真顔に戻って私たちの後ろに回り、背中を押した。



「ふざけてる場合じゃないな。
長話してたらお前のお父ちゃんに『ウチの若頭はよ返さんかい』って催促食らいそうや、さあ帰った帰った」



しかし絆は帰ろうとせず、彼と向かい合った。



「最後にひとつ聞きたい」

「なんや?」

「黒幕の池谷達はどうするつもりだ。極道のやり方で落とし前つけるのはやめた方がいい。
後ろ盾だった同業者が撤退したとはいえ、半グレごと叩きのめさないと意味が無い」

「分かってる、あいつらサツに突き出す。
せいぜい上海マフィアからの報復に怯えて獄中生活過ごして欲しいなあ。
ほら、俺らと違って秩序がないからえげつないもんな」



絆の疑問に回答し、また背筋が凍るような極道の顔になる。

絆は構わず部屋の外に出ようと歩み始めた。

私もその後をついて行ったけど、部屋を出るまで始終ドキドキしていた。
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