惚れたら最後。
退院の支度が終わり、裏手に回って地下の駐車場にたどり着いた。

どうやら出口までVIP対応らしい。

でもまあ、ヤクザと裏で繋がりのある病院なんだから当たり前か。



「琥珀」



ふと、静かな駐車場き声が響いた。

振り返ると腕を組んで壁によりかかっている拓海さんを見つけた。



「拓海さん……」

「退院おめでとう、これ俺から」

「え?退院祝いなんていいのに。1日しか入院してないんだから」

「まあ開けてみろよ」

「開ける?何を……え?」



拓海さんから花束を渡され見てみると、花に紛れて封筒のようなものが入っていた。

中身を確認するとそれは通帳だった。

中を確認するとサラリーマンの生涯年収に匹敵するほどの額が記帳されていた。



「……何これ」

「夢がお前のためにって残したものだ。プラス俺のポケットマネー分を加えた。
本当は20歳になって渡そうと思ってたが、極道の妻になるんじゃ今後はあまり会えなくなるだろ?」

「べ、別にすぐ結婚するわけじゃない……」

「ははっ、いずれそうなるんだったら受け取ってくれよ。
もう情報屋として働かないんだったら収入源がないだろ?」

「だとしても、いらないよこんなに」

「自分で使わないならそのまま流星と星奈に渡してくれ。
うんと贅沢させてやってくれよ」

「でも……」

「貰えるもんはもらっとけ。受け取ってくれないと夢が化けて出てきそうだ」

「……分かった」

「元気でな琥珀。俺は定年までここに居るつもりだからなんかあったらすぐ来い。
あ、あと流星と星奈の入学式は俺も行くからな」

「うん、ふたりとも楽しみにしてるみたい。ありがとう拓海さん」



私たちは本物の親子よろしくハグをして、朗らかな笑顔で別れた。
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