惚れたら最後。
その後リビングでテレビを見ながらしていると談笑していると、詐欺グループのリーダー格の身柄を拘束したとのニュースを見た。

連行される池谷たちの顔を見て心から安心し、そしてふと思い出した。



「……幸せの形は自分で決めるもの、か」



あの男──赤星の言った言葉には何か腑に落ちるものがあった。

もう会うことは無いだろうけど、一生忘れることはないだろう。

大きな秘密を抱える者はいつも同じ目をしている。



「え?」

「ああ、なんでもない。こっちの話。……で、なんの話しだっけ?」



絆が顔を覗き込んできたことでそれ以上考えることはやめた。



「抜糸いつだっけって話」

「……ああ、明後日だよ。化膿してなかったら大丈夫だって」

「そっか……傷は綺麗に治りそう?」

「うん、綺麗にパックリ行ってるから逆に傷もくっつきやすいだろうって」



永遠に問いかけられ、そう答えたら彼女はものすごく痛そうな顔をした。



「想像するだけで痛そう……でも、傷が残らないならよかった」

「うん、顔は目立つからね。メイクも出来ないし」

「だよね、メイクできないのやだ。抜けちゃった歯は?」

「抜糸した後に行こうかなと思ってる。前歯だからできるだけ早くしたい」



心配してくれる永遠と語っていると外から車のエンジン音が聞こえた。

すると、絆が琥珀の手を握る。



「……親父だ。琥珀、行こう」



そう、全て終わったわけじゃない。

組長にこれまでの経緯を説明するという試練が待っているのだ。

私は深く深呼吸して立ち上がった。
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