惚れたら最後。
「琥珀おかえり〜」



帰宅後、リビングに繋がるドアを開けると流星と星奈がこっちを見上げて立っていた。



「流星、星奈……」

「お姉ちゃんおかえり!絆お兄ちゃんとデートしてきたの?」

「ずるい、おれも琥珀とデートしたかった!」



半日ぶりの再会に、足元に抱きついてきて歓迎してくれた双子たち。

相変わらずのかわいさにノックアウトしてしまいそうだったが、その気持ちの前に疑問が勝った。



「なんでふたりともランドセル背負ってるの?」



入園式はまだ先なのに、どうやらクローゼットから引っ張り出してきたらしい。

星奈は淡いパステルカラーの紫のランドセル。小花柄の刺繍が入っていて女の子らしい可愛いチョイスだ。

一方の流星はギラギラ輝くゴールドのランドセル。流星はよく動き回るので、どこに居ても目立つ色なのは非常にありがたい。



「あー、ごめん。俺が見せてくれって言ったんだよ」



すると、視界の隅で立ち上がる人の影が。

目線を上にあげるとソファーから立ち上がった憂雅さんの姿が見えた。



「あ、憂雅さんいたんですね」

「え、待って気づいてなかった?シンプルに傷つく」



自身の存在に全く気がついていなかったことにショックを受ける憂雅さん。

絆はその表情がおもしろかったのか、琥珀の後ろで笑っていた。
< 286 / 312 >

この作品をシェア

pagetop