惚れたら最後。
外に出て一眼レフの使い方を教わった流星は、「さくらだ〜!」と言って校庭に散る桜を写真を撮っている。



「……流星ってあんな写真撮るの好きだったっけ?」



見守りながら首を傾げる拓海さんは不思議そうな顔だ。



「最近よく写真撮ってくれるんだ。将来は写真家だったりして」

「へ〜、ならカメラ買ってやろうかな。入学祝いまだあげてないし」

「ダメだよ。次の算数検定受かったらカメラ買ってあげるって約束なんだから」

「算数検定?今どのくらいのレベル?」

「次は9級。小学校3年生レベル」

「え、マジ?まだ1年生なりたてだろ?
さすがIQ135の天才だな」

「そりゃあ夢の英才教育受けた子だからね」

「……そっか」



笑う拓海さんは写真を撮る流星と、桜の花びらを追いかける星奈を見ながら声を発した。



「今朝、夢の墓参りに行ってきた」

「道理で線香の匂いがすると思った。それで遅刻したの?」

「ああ、ここまで来るまでに道が混んでてさ。
って、そんなに匂いする?しまった、車にジャケット置いていくべきだった」



袖を嗅いだ拓海さんは「あちゃー」と古い言い回しで顔をしかめた。
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