惚れたら最後。
「拓海さん見てみて〜!」



しかし一眼レフを両手に抱えた流星が走ってくると切り替えて笑顔になった。



「写真とったよ!どう?おれ上手?」

「……へ〜、本当に綺麗に撮るんだな。びっくりした」



撮った写真を確認する拓海さんは目を丸くして感心している。

得意げな流星は「もっといっぱい写真とってくる!」と言って星奈がいる桜の木の下へ走っていった。



「……子どもの成長って早いな」

「なに急に、年寄りみたいなこと言って」

「だーれが年寄りだコラ」



低い声でそう言った拓海さん。でも表情は明るく生き生きとしている。



「なんか、あの二人見てると琥珀の小さい頃思い出すな」

「そう?」

「ああ、そう考えると琥珀も大人になったなぁ。
夢も鼻が高いだろうよ」



髪を揺らしてサァァ、と春風が通り抜ける。

桜の花びらが舞って、子どもたちがキャッキャと笑顔をはじけさせる。



「好きって認めたら気が楽になった」

「……夢のこと?」



風に遊ばれる髪を押さえて拓海さんに聞く。

彼は舞う花弁を目で追って、それから笑って頷いた。
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