惚れたら最後。
「まあ、それならそうと早く飽きてしまえばいいんだけど。
もうちょっと粘って、方法がないなら会ってみてもいいかな」



ところで、なぜ私が荒瀬絆に近づいたのか。

それはもし、黒幕を決定づける資料が手に入らなければ、荒瀬絆のスマホを介してデータベースに侵入するつもりだったからだ。

飲み物に睡眠薬でも入れて寝てる間に、と思ったが絶対に無理だ。



「さてどうしようか……」



一通り考え、その日は早めに眠りについた。

翌朝荒瀬組から依頼が来ていたのでファイルを開くと、こう書かれてあった。



───都内に住む20代の「琥珀」という名前の女のリストが欲しい───



依頼の差出人は荒瀬絆だった。

琥珀は驚きより前に(むな)しさを感じた。

虚しさというのは、もしかして荒瀬絆に求められているのかもしれないと期待する自分にだ。

これじゃそこらの女と一緒だ。




巷の女どもは、自分も「闇色のシンデレラ」になれると信じてやまないのだ。




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