惚れたら最後。
その後、死後そのまま残しておいた夢の自室から荒瀬組のデータベースの基盤となるシステムを見つけた。

そして名古屋東海連合と江戸川興業のデータを盗むことに成功した。

これによってどちらが黒か判明した。

あとは今後、奴らの事務所や組長自宅の防犯カメラをハッキングし動向を伺うだけだ。

だからもう、荒瀬絆に会うことに意味はないのだけど。



「お隣、いいですか?」



私は鳴海航介が経営するバー、ondineに足を運んでいた。

絆はいつも通りカウンターで飲んでいる。



「あ?……琥珀」



不機嫌に振り向いたかと思えば、私だと認識するとぱあっと表情を明るくさせる。

すぐに私の手を取り奥の部屋へ連れていったはいいものの、ベッドのに座ると黙ってしまった。

だから私は絆の隣に腰を下ろした。



「何考えてたの?」

「お前のこと」

「どんなこと?」



視線を落とした絆に優しく声をかけた。



「また嘘ついたのかって?」



そういうと私の瞳を見つめてきた。

その目は心なしか悲しげに見える。



「梟に20代の琥珀って名前の女性を探させたんでしょ?そりゃ見つかるわけないよ。
だって20代って枠に当てはまらないから」

「は?お前、30過ぎてんの?」

「まだ10代ですけど?
そんな老けて見える?失礼だなあ」

「……え?」

「そんな驚かないでよ……」



ショッキングなことでも聞いたかのように目を見開き眉をひそめるから、逆にショックを受けた。



「なんだ、そういうことか」



ふと絆の顔を見ると、安心しきった顔で見つめ、その手で優しく頬に触れてきた。

かと思うと腕を掴まれベッドに押し倒されてしまった。
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