惚れたら最後。



「ママ!見て、綺麗だよ!ケータイ貸して、おれも写真とるの!」



イルミネーションの会場に着いた流星は大興奮だった。

手に持っていたスマホをジャンプでもぎ取ると、カメラを連写してたくさん写真を撮っていた。

しかし興奮状態でもしっかり親子を演じるあたりうちの弟天才だな、親バカならぬ姉バカを発揮していた。



「流星!はぐれるからちゃんと手をつないで!」

「……はぁい」



結局、おませな星奈の一声によりちょっと落ち着いた流星だったが、今度は手を繋いでいた星奈が満面の笑みを浮かべ始めた。



「えへへへ」

「どうしたの星奈」

「もう大事なテスト終わったんでしょう?
仕事はいつも大変みたいだけど、これからはちょっと甘えてもいいんだと思って」



星奈の言う大事なテスト、というのは高卒認定試験のことだ。

そう、私は高校に通っていない。

というかこんな幼子の世話をしながら、情報屋としての仕事をしながら、高校に通うなどできなかった。

だからつい先週、11月に入ってから高卒認定試験を受けた。

海外に移住して真っ当な生活を送るのだとしたら、高卒程度の資格は持っていた方がいいと思った。

海外の大学に入って学生生活というものを経験してみようかな、と考えたりもしている。



「そうだったね、ごめんねいつも我慢させちゃって」

「なんであやまるの?わたしはいつもしあわせだよ!」

「……」

「どうしたの?」

「ううん、なんでもないの。感動しちゃって」



それにしても、双子たちはなんて素直でのびのびと育ってくれたんだろう。

笑顔で幸せだと言ってくれた星奈に感動して少し涙が出た。
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