惚れたら最後。
「ぷっ、あはは!」



思わず笑って拍手を送ると、流星の隣に立っていた女の子が、急に流星の手を掴んだ。

え、何?まさか横取りしようとしてるの?

いや、違う。この子!



「やっぱり!この前いっしょに流れ星見た子だ!流星だよね?」

「……あ、涼風だ!」

「こんな所で会えるなんて奇跡だよ!
イルミネーションよく見えるところ知ってるからいこうよ!」

「え、うん!」



一気に血の気が引いた。

流星の手を引いた女の子が、荒瀬颯馬の娘、荒瀬涼風だったからだ。

なぜここに?いや、そんなことより……。



「ダメだよ流星!行かないで!」



しかし、大音量の音楽がかかるステージでは聞こえない。

流星はこちらを見向きもせず、両手いっぱいに抱えたお菓子を落としながらステージを降り、女の子の後についていった。

普段なら絶対他人についていくことなんてしないのに、どうして?



「流星、どこいくの!?お姉ちゃん、どうしよう流星が!」

「追いかけなきゃ……星奈、走れる?」

「うん!」



とにかく追いかけようと方向転換すると、目の前に10歳前後の男の子が立っていた。



「……あ、僕が場所知ってるから……案内、しましょうか?」



か細い声で話しかけてきたのは、川上剛の息子、剛輝。

……この子もいたの!?けど、背に腹はかえられないし。

剛輝に案内してもらうことにして、歩きながら会場に入る前にもらったパンフレットを見ると、荒瀬組と裏で繋がっている会社が主催として書かれていた。

私は今にも膝から崩れ落ちそうだった。

まさか、ここまで災難続きとは。

最悪の状況を思い浮かべ、血の気の引いた顔で子どもたちの後をついていった。
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