惚れたら最後。
剛輝は人混みをくぐり抜けて、ステージ裏のビルの中に入っていった。

エントランスでカードキーを挿してエレベーターに乗り、5階に上がると、全面ガラスの窓に面した廊下から、イルミネーションをキャアキャア言いながら涼風と2人で眺めていた。

私はため息をついて、遠くから声を発した。



「流星」



低めの声に騒いでいた流星がびくりと肩を震わせた。

手を繋いでいる星奈も、怒った私をびっくりしたように見上げている。



「なんで私に何も言わずついていったの?追いかけてなかったら流星、迷子になる所だったよ」

「ごめんなさい、あたしが勝手に連れていったんです。流星は悪くないの」



流星に近づいて、わざと目線を合わせないで見下ろすように叱ると、涼風が前に出てきた。

しかし、淡々とした口調でさらに冷たく言い放った。



「いいえ、はしゃいで自分勝手に行動した流星が悪いの。
帰るよ流星、もうこれ以上ここにいられない」

「嫌だ!いい子にするから、もう勝手なことしないから、まだ帰りたくない」

「そういうことを言ってるんじゃないの。帰らなきゃいけなくなっただけ。
どうしたの流星、今日おかしいよ」

「やだ!おかしくないもん!」




珍しく激しく駄々をこねる流星に琥珀は困った。

仕方なくしゃがんで目線を合わせて話を聞こうとしたが、その瞬間に流星は走り出した。



「流星!」



流星はエレベーターに向かって走り出したかと思うと、その中間にあった扉を開いた。



「そっちはダメだよ!」



涼風が慌てて追いかけたのでその後を追う。

扉が開いた先に、黒を基調とした落ち着いた雰囲気の会議室があった。

流星を探していたがその前に、室内の窓際に立つ3人の男の存在に息を飲んだ。
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