惚れたら最後。

梟の秘密

仕事を終えた私は午前4時頃、自宅の高層マンションの25階の部屋に帰ってきた。

持っていたカードキーでロックを解除し、ドアを開けてから電気をつけ声を発した。



「ただいま、夢」



私は玄関に飾ってある、女の写真に必ず挨拶をする。

夢というのは前任の梟の本名。

実は長年情報屋として活動している梟は、私で数えて三代目だ。

挨拶を済ませると暗い廊下をそっと足音を立てないように進む。

しかし、リビングにほんのりと明かりがついているのを見てため息をついた。



琥珀(こはく)、おかえり!」

「琥珀姉ちゃん!おかえり~」



リビングに繋がるドアを開けると、待ってましたと言わんばかりに小さな子どもが出迎えてきた。



「ただいま、流星(りゅうせい)星奈(せな)



彼らは1歳の頃、ゴミ捨て場に置き去りにされ、親に育児放棄された捨て子だ。

獅子座流星群の降る夜に出会ったから、名前は流星と星奈。

今年で6歳になる2人はわんぱく盛りだった。



「お出迎えありがとう。だけどこんな時間まで起きてたらダメでしょ?」

「琥珀が帰ってきたから起きたの!」



いたずらっぽい笑みを浮かべるのは流星。

この子は賢いが、星奈に比べてずっとやんちゃな性格だ。



「その割にはお目目ぱっちりねぇ。
さては……また私に内緒でゲームしてたでしょ」

「あ~!バレちゃった~!」

「ダメじゃん流星!お姉ちゃんが帰ってきたら眠そうにしなきゃって言ったのに!」



対する星奈はおませさんというか、5歳らしからぬ大人びた考え方をする性格だった。



「ハハッ、私に嘘で勝とうなんて10年早いわ」



ちなみに私の本名は星奈でなければ夢でもない。

星奈は妹で、夢は『琥珀』という名を与えてくれた育ての親だ。

万が一表の世界へ戻る時のために、本来の戸籍で養子縁組をしてくれた。

私の名前は中嶋琥珀(なかしまこはく)

情報屋を生業として生きている人間だ。
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