君をトリコにする方法
「そんなことない!」



私と優愛ちゃんの声が被る。

澪は驚いた顔で私たちを見た。



「吉川くんに限ってそれは絶対ないよ!」


「そうだよ澪!もしそうだったとしたら吉川くん『別れてない』なんて言いに来ないでしょ!」



私たちが熱弁すると澪は圧倒されたのか「え、ああ……そうね」と頷く。



「あのね、澪。できれば怒らないでほしいんだけど……私、吉川くんの気持ちわかるなあって思っちゃって」



勇気を出して打ち明けると、澪は意外だと思ったのか目を丸くする。



「そうだったの?ごめん、じゃああたし希帆のことも――」


「あ、ちがうの!謝ってほしいとかじゃなくてね、吉川くん、澪がそう思ってること聞いたら嬉しいんじゃないかなって思って。私だったら嬉しいし!」



私も吉川くんもきっと自分に自信がない。


相手がすごくかっこいいから、美人だから、自分にはもったいないんじゃないかって。


周りの人にどう見られてるのかって考えて、臆病になってる。


でももしその相手の想いを聞いたなら、瞬が『希帆だから付き合ってる』って言ってくれたら。


勇気が、元気が出るんじゃないかって思うから。



「……うん、そうだね。あたし、瑞稀と話してみる」



そう言った澪は完全に吹っ切れていた。

私と優愛ちゃんは目を合わせて笑い合う。



「ありがとね、希帆、優愛」

「ううん、こちらこそ!」

「ふふ、応援してるね、澪ちゃん」



残ったケーキは、いつものように取り留めのない会話を交わしながら味わって食べた。
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