君をトリコにする方法
「その、ええとですね……」

「うん」



できてないって嘘を吐いてしまおう。

そう思ったのは一瞬で、開きかけていた口を閉じる。


ここで「彼氏ができた」と言ってしまえば、それは誰かという話になるかもしれない。


こうちゃんは瞬のことを知ってる。


そんなことを言う人じゃないってわかってるけど、相手が瞬だとわかったら、もしかしたら「意外だな」とか「釣り合ってない」とか、そんな風に思われるかもしれない。


それは私にとってとても恐ろしいことで、もしそんな風に思われてしまう可能性があるのなら隠しておきたかった。



だけど……


だけど今、ここで彼氏はいないと言ってしまったら、瞬と付き合えてるという事実が泡になって消えてしまうんじゃないかなんて考えてしまって。


それは、比べられたりすることよりももっと怖いことだから。



「……できた。実は彼氏、できたんだ」



はっきりそう言うと、こうちゃんにとっては意外な返答だったのか目を見開く。


そのあと目を伏せたからどうしたんだろうと思って声をかけようとするけど、それも一瞬で、すぐににかっといつもの表情に戻る。
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