君をトリコにする方法
つかまれていた手がそっと離れる。

心配そうな表情で顔をのぞき込まれて、思わず一歩後ろに下がった。



「おい、なんで逃げんの」


「に、逃げたんじゃなくて、ドキッとして体が勝手に動いたっていうか……!」



慌てて説明していると、瞬はあまり興味がなかったのか、優しく私の目元に触れる。



「……ん、もう大丈夫そうだな」



そう言われて、瞬がいったいなにを気にしているかわかった。


胸の辺りがぽかぽかと温かくなるのを感じながら、安心してもらうために笑う。



「もうだいじょうぶだよ!心配してくれてありがと!」


「ならいいけど……急に泣き出すから焦った。言っていいって言われたけど、あいつ声でかくて結局みんなに知られたし……」



浮かない顔をして話す瞬。

たぶん、合コンに誘われて「彼女がいる」って断ったらあんなことになったから、私が嫌な気持ちになってないか心配してくれたんだろうな。


確かに、こんなすぐにクラスのみんなに知れわたっちゃうとは思わなかったからびっくりしたけど……



「ふふ、だいじょうぶ!怖かったけど、みんなにちゃんと言えてよかったなって、嬉しくなっちゃって」



泣いてしまったことが今更恥ずかしくなって笑うと、瞬はほっとしたのか息をついた。



「ん、そっか」



そっけない返事なのに、表情は嬉しいからなのか明るい。


その顔がまたかっこよくてきゅんとしていると、急に距離をつめてきた。
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