君をトリコにする方法
「希帆!あんた昨日の怪我は大丈夫なの!?」



真剣な顔で聞いてくる澪に、また胸がきゅーんとして抱きつく。



「澪も~っ、ありがとう!」

「ちょ、ちょっと!」



優しい友達もったなあ……



えへへ、と笑みをこぼしていると「そういえばさ、瞬ってホントに彼女いねーの?」と気になる声が聞こえた。


思わずちらっと声のした方を見ると、瞬とクラスの男子が楽しそうに会話をしていた。



え、待って、なんて答えるの。


私たちって一応付き合ってることになってる、よね……


ということは……そういう風に答える?


いやでも、瞬のことだからごまかしたりする方が可能性高いかも。



……あれ、私なんで怖いんだろう。

大丈夫、大丈夫……



心を落ち着かせるように繰り返していると、ぱちっと瞬と目が合った。


でもそれは一瞬で、瞬の視線はすぐにクラスの男子へと戻り口を開く。



「あー、いや――」


「わああーっ!私、瞬に用事があるんだった!ちょっと借りていい!?」


びゅんっと急いで瞬の方へ行くと、みんな驚いた表情をしながら「いいよ」とうなずいてくれる。



「ありがとう!行こう瞬!」

「は?なにお前急に……」

「いいからいいから、ね!」



ぐいぐいと引っ張ると、諦めた顔をしてついてきてくれた。
< 32 / 189 >

この作品をシェア

pagetop