君をトリコにする方法
人気のない廊下に出ると、「で、なんなの?」と見下ろされる。


私は息を吸って、率直に言った。



「付き合ってること、みんなに秘密にしてほしいの!」

「は?なんで?」

「な、なんでって言われると……えーっと……」



瞬なら『俺もそうしようと思ってた』って言うかと思ったけれど、違った……!



さっき止めといて正解だったかもしれない……



うーんうーんと悩んでいると、「おい」と声をかけられる。



「俺と付き合ってるってバレるのいやなの」



その声が少し悲しそうに聞こえて、ぶんぶんと首を振る。



「違うの、上手く言葉にできないけど、なんだか……」

「なんだか?」



言葉の続きをいつもより優しい口調で催促される。


あんまり言いたくはなかったけれど、素直に口に出した。



「……怖いの」



なんで怖いのか、理由は自分でも全然わからなかった。


きっと単純で簡単なことだってことはわかるのに、明確な答えはつかめない。



ただすごく嫌な予感がしただけで。



『怖い』以外なにも言えずにいると、ぽんと頭をなでられた。



「……わかったよ、希帆がいいって言うまで内緒にする」


「……い、いいの?」


「いいよ、だからそんな不安そうな顔すんな」



ガシガシと少し乱暴な手つきでなでられるけど、優しさを感じて胸がぎゅっと苦しくなる。
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