君をトリコにする方法
「……希帆さ、手つなぐのは大丈夫そうだったよな?」


「え、う、うん」



こくりとうなずくと、そっと手を握られた。


私よりも大きくて角ばった手は温かい。


しばらくすると指と指がからまって、恋人つなぎに変わる。


2回目だからか最初よりは落ち着いていて、ぎゅっと握り返すことができた。


そんな私を見て、瞬が嬉しそうに口を緩める。



「ん、大丈夫そうだな。あとは……」

「ひゃっ!?」



保健室のときみたいに耳にキスをされて、思わず声が出てしまう。


びっくりしていると、そのままおでこにも優しくキスされた。



「いやだった?」


「い、やじゃないけど!心臓がドキドキしすぎて爆発しちゃいそうだよ!」


「ははっ、なにそれ」




私の言葉に、瞬はおかしそうに笑う。




「だ、だって慣れてないんだもん!」


「そりゃよかった」


「よかったって……瞬はなにも得しないでしょ」


「そんなことないけど」


「ええ?もう……瞬ってば昔から、たまによくわかんないこと言うよね……」


「どちらかというと希帆の方が分からず屋だと思うけど?」



瞬は嬉しそうに笑うけど、私にはやっぱり全然わからなかった。


それから軽い雑談が続く。


さっきまでの、私たちにしては少し重かった空気が晴れていく。


それと比例して、私の中をぐるぐると渦巻いていたもやもやも軽くなる。
< 39 / 189 >

この作品をシェア

pagetop