君をトリコにする方法
そのとき、突然大ボリュームで愉快な音楽が流れ始める。



「皆様お待たせいたしました。まもなく、イルカショーが始まります――」



アナウンスが始まると、会場が一気に期待で湧き上がる。


もちろん私も例外じゃない。



「瞬っ!もう始まるって!楽しみだね!」



そう言って横を向いたとき、瞬の顔は思いのほか近くにあった。


なんでと思う前に、唇にふにっと温かい感触がする。


何が起こったかすぐに理解できなくて、そっと離れていく瞬の顔をじーっと見つめた。



「……イルカショー始まんぞ」



そう言って前を向く瞬の耳が赤くて、やっと頭が働いた。



「……なっ、なんで、今っ、だって、なんで!?」



顔だけじゃない、体全部が熱くなる。


だって、今キスされたから。

耳にでもおでこにでもない、唇に。
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