君をトリコにする方法
「これ、ちょっとしたお礼だ。あ、日高と仲良くな~!」



ぽんとノートの上に置かれたのは、美味しそうなひとつのクッキーだった。


なんで瞬?と思ったけれど思い出した。


この前の授業でお姫様抱っこされたからだ!


あれは忘れてください!と言おうとすると、先生は職員室に引っ込んでしまった。



「ああ……」



思わず声が漏れ出てしまう。


なんてタイミングの悪い先生なんだ。


いや、もういいか、うん……


早くノートを持って行って、教室に戻ろう。



お昼休みでにぎやかな廊下をてくてくと歩く。


やがて階段が見えると、そこで悩みの種である瞬とばったり出会った。



「なにしてんの、雑用?」

「うん、そんなとこ」

「へえ。偉いね」



そう言いながら、持っていたノートの上半分を持ってくれた。


ふわりと一気に軽くなる。



「手伝ってくれるの?」

「ん、これどこ持ってくの」

「3階の準備室。ありがとう!」



笑ってお礼を言うと、素っ気なく「ん」だけ返ってくる。


あれ、もしかしてちょっと照れてる?


もう、優しいくせに変なところでシャイボーイなんだから!


あんだけ甘いセリフを吐いて甘いことしてくるのに……って。
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